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杭州もいよいよ本格的に冬に突入しました。西湖もいつの間にか冬景色でとてもきれいです。
杭州の冬は、思ってたよりもずっと寒いです!!湿度があるせいか、肌に差し込むような寒さです。

DSC041949月の新学期が始まってから1ヶ月半ほど、ひたすら墨だけで「梅蘭竹菊」の運筆を学んでいた私ですが、黄山の写生旅行から帰ってきてからは彩色に昇格(?)して、ここ1ヶ月は陸抑非という画家の画法を集中的に学んでいました。陸抑非は画家でもあり教育者でもあった人ですが、中国美術学院では呉昌碩と同様に陸抑非の写生をとても重視していて、学部生も皆一度は陸抑非の模写を経験してから他の古典を勉強するようです。

呉昌碩などの達筆さに比べると、植物をそのまま写生したような感じで私としては親しみやすく、描いていて楽しいです。しかし筆の動かし方はやはりそれぞれの対象に合わせた特徴があります。私は椿から始めて藤、芙蓉、牡丹…と進んで行きましたが、筆の動かし方が違うと妙に重たい感じになったり、あるいは浅くなったり、形がつぶれてしまったり、、、見た目より難しいです。。。それぞれの植物の特徴がどう運筆と結びつくのかというところが、難しくもあり、ワクワクするところでもあります。

DSC04442これは藤。つるの部分は先生が描いてくれました。達筆〜!
少し様になってきたということで、最近は徐々に課題のサイズも大きくなって、自分で構成して描くようになってきました。

先生といえば、こちらの大学では「示範」といって先生が実際に教室で描いて見せてくれる機会がとても多いです。実際にどういう風に筆を使っているのか、画集や模本を見ても分からないことも何度か先生の示範を見ているうちに運筆のイメージができてきます。中国の画家が、誰に教わったのかという脈絡を重視するのもこの伝承の仕方に要因があるのではないかと思っています。

DSC04874時には花鳥の先生が書を書いてみせてくれることもあります。中国画は自分の作品に画賛を入れないといけないので先生も学生も皆書もひととおり勉強していて、様々な書体が書けたりします。私は書の経験は皆無なので、、、今になって絵と平行して練習しています。

 

IMG_1876まずは基本の楷書から、唐時代の褚遂良の書「陰符経」を模写しています。まだまだ長い道のりです、、、

書を勉強することは自分の作品の題字を書くということ以上に運筆の基礎を学ぶという意味があって、絵を描く上でもとても重要な基礎練習です。書で大事なのは「中鋒用筆」これは筆を立てて、筆の中心を使って描く、というような意味なのですが、この「中鋒」が言葉では何とも説明しづらい、とても感覚的なものです。私も最初は見よう見まねで筆を動かしていて、形を真似てもいまいちこの感覚がつかめなかったのですが、書を平行して勉強しているうちに、最近は何か筆の先に力がこもるような感覚を感じるようになってきました。特に写意画は書との結びつきがとても強いというか、書の延長線上に絵があるような、境目が限りなくあいまいなものだと感じます。

DSC04236これは杭州に来て初めて題字を入れた作品です〜!書は同級生の代筆ですが、落款も入れた初めての完成作品です。この日は先生のお友達の結婚式に皆で小品を描いてお祝いに行くという日で、私のこの作品も同級生の作品と共にお嫁に行きました。

このように(?)毎日思いもよらないことが色々あって、ひとつ学ぶとさらに知りたいことが増えていくような感じで、一年という留学期間はやはり短すぎるなあと思う時もあります。アトリエで先生や同級生が描く様子を見つつ、できるだけ多くのことを吸収できるように、今よりも次はもっと良い線が引けるように、と思います。何がどう自分の作品につながるのか、つながらないのかも分かりませんが、おもしろいと思うことを積み重ねて、日々過ごして行きたいと思います。

大学の旅行で安徽省の黄山に行ってきました!
10月の国慶節があけると、美術学院の学生はそれぞれの科がいっせいに中国各地の農村へスケッチ旅行に出かけます。行く場所は科によって雲南、貴州、景徳鎮など様々ですが、私は所属する写意画の先生や研究生達と一緒に雲海や奇岩で知られる黄山へ行ってきました。

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黄山市は杭州より少し南に下ったところにありますが、杭州市内から車で3時間くらい。高度が高いので市内でも既に気温がかなり低く、寒いです。まずは黄山の麓のこの町に滞在して安徽省の農村の古い街並を見学したり、ぶらぶらと散策したりしました。DSC03806

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市内に2、3日滞在した後、黄山へ出発!

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この日からは山の上の旅館に泊まったので、全ての荷物を持って山頂を目指します。途中まではロープウェイで登って、途中からはひたすら山登りでした。。

山登りと言っても黄山は道がかなり整備されていて、階段を少しずつ登って行くような感じです。しかし普段絵を描いている人たちなので、皆すぐに息を切らしつつも、なんとか山上にたどり着きました。山上に着くとそれまでの視界が一変、、、

DSC04115雲の上にいました!!

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切り立った岩山と、雲海と、松林と、刻々と変わる光がまるで水墨山水画そのもののようで、目の前に広がる空間のスケールが一瞬つかめなくなるような感覚を覚えました。見ている景色は現実のものなのに、時々本当に二次元の絵のように見える瞬間があります。現実離れした、時に形式的に見える水墨山水画も、こういう風景を見て描かれたのだとしたら画家にとっては限りなく写実だったのだなあと思いました。

そして夜は先生や先生の友達も交えて毎日ひたすら宴会です、、、DSC03747

今回の旅行で、中国の宴会の凄まじさ(?)を身を以て体験しました。50度以上の白酒を乾杯の度に飲み干さないといけないので、学生は胃を守るためのハチミツを持参(!)と、ここまでは普通の旅行と一緒ですが、夕飯を食べ終わってからが本番でした、、、

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夕飯の後、どこからともなくおもむろに机や紙が運ばれて来て、先生も交えて皆で即興で絵を描き始めます。
これにはびっくりしました、、
題材は、自分の得意なモチーフでも、黄山の印象でも何でも良いのでDSC03957

山水の先生が黄山の印象を描いたり、

DSC03955金魚を描き出す人がいたり

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先生も筆を取ってその場で何枚も描きます。学生にとっては先生の運筆を間近で見ることができて、かなり贅沢な空間です。
私たち学生はというと、これも私にとってはかなりカルチャーショックだったのですが、この日はなんと全員で一枚の絵をを合作しようということになりました。

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特に打ち合わせする訳でもなく、まず1人目が松を描きだすと、

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次の1人がそれに合わせて後ろの枝を描くというふうに、リレー形式(?)で絵がどんどんできていきます。最初に大まかな下図がある訳でもないので、一人一人の手が入るたびに絵のバランスや、方向性が変わります。合作というよりもセッションというか、かなり即興生の高いものです。私はただただ驚くばかりでしたが、皆は割と慣れているらしく、特にためらうこともなく筆をふるいます。普段の自分の作品の雰囲気というよりも、基本に忠実な筆さばきをします。運筆の基礎を共有しているからこそなせる技だと思います。計10人くらいの学生が1人ずつ手を入れて、だんだん秋の黄山の松林の絵になっていきました。DSC03977
全員参加といういうわけで、私も写意歴1ヶ月ですが竹を描くことになり、、

DSC03968竹の葉を描き入れました!やり直しのきかない一筆描きなので、中国に来て以来、一番緊張した瞬間でした、、、しかしここ一ヶ月の素振りの成果が出て、まずまずの出来でした。
DSC04000最後には先生も手を入れて、鳥を描きこみました。
学生の班長が代表して題字と手を入れた人全員の名前を入れ、全員の落款を押して、

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完成です!!

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先生や同級生の名前とともに、私の名前と落款も入っています。これは、私にとってはとても貴重な、本当に嬉しい体験でした。

ちなみに、この日描いた絵は先生の絵も含め黄山でお世話になった人や旅館に宿代代わりに寄贈しました。先生が、何年か経ったら黄山に来て自分の若い頃の筆跡を見たら良い、と言っていましたが、もしそれが叶ったら、本当に素敵なことだと思いました。昼間は雄大な景色を見て、夜は皆で食事をして、絵を描き、私にとっては本当に驚きの連続でしたが、常に五感が刺激され続けるような、言葉に尽くせない濃密な1週間でした。

杭州に来てからちょうど1ヶ月が過ぎました。新しい場所での生活や大学の手続き、ビザの申請などなど、、毎日てんやわんやであっという間に1ヶ月過ぎてしまいました。
今週は国慶節で大学が一週間休みです。その前にも9月の20日前後に中秋節で3連休があり、中国は連休続きでした。

こちらに来た一番の目的である中国画の授業も始まって3週間くらいたったのですが、日本にいた時に勉強したいと思っていた中国画の筆法や書に触れながら、とにかく毎日新しい展開があるので、本当〜〜に楽しいです。勉強が追いつかないこともしばしばありますが、先生や同級生に助けてもらいつつなんとかやっています。

これが大学のアトリエ。

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手前が私の席です。私は研究生(大学院)のクラスに入ったので一人のスペースが割と広めです。自然光が入って気持ちの良いアトリエです。

中国画科は専攻が山水、花鳥、人物という風に画題によって分かれていて(これも最初に知ったときは衝撃的でしたが、、)私が在籍している花鳥画のコースは大学院になるとさらに工筆画と写意画に分かれています。学生は学部の段階で専攻に分かれますが、学部の時は写生、工筆、写意、模写や書など一通りの基本を学び、大学院でさらに専門に分かれて自分の創作に入って行きます。

工筆画というのは

工筆

写生を基本とした描法で白描で形をとって薄塗りの彩色で仕上げます。下図を作って段階をふまえて仕上げていくところや彩色の仕方も日本画に共通するところが多くあります。

それに対して写意画の方は、

呉昌碩

日本で言ういわゆる水墨画のイメージに近い気がします。写意も写生を基本にしますが、対象の特徴をより抽象化して、筆跡のバリエーションで一気に描きます。一見無秩序なようですが、こんなふうに筆を走らせるのは相当な量の写生と修練と、絵だけではなく書の技術も必要です。私の今回の留学の目的はこのような筆法を学ぶことなので、写意画のコースに在籍しています。

とはいっても中国画に関して初心者なので、まずは基本の「梅蘭竹菊」から。

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先生や同級生が墨でさらさら〜と描いて見せてくれるので、まずはそれを真似してみるのですが、、、全く思うようにいきません!紙も墨も筆も使い慣れているはずなのに、この三者の関係性が日本画とはまるで違います。
墨が紙にしみ込むスピードと筆の動き、向き、水分の量など、同級生の筆さばきを見ているとこれらのコントロールを瞬時にしているようです。その上で絵の構造、構図を決めるので頭で考えていたらできません。どちらかというと「体得するもの」だと思いました。
というわけで、

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良い線が引けるまでひたすら梅の枝を描いたり、、、

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蘭の花を描いたり。制作というよりも素振り??なぜ最初に梅蘭竹菊を学ぶかというと、その中に筆法のバリエーションが色々と詰まっているからだそうです。私にしてみれば今までの自分の画面に対するアプローチとのギャップはかなりのものです。うまくいってもいかなくてもとにかくどんどん描きます。するとだんだん感覚の幅が狭まってくるというか、良い動きと悪い動きの標準がだんだん絞れてくるようです。

アトリエ10言葉の壁もやはりあります。特に線の様態を表す言葉が多様でこれは辞書にも載っていないので、、、その都度同級生に聞いて理解するようにしていますが、とても丁寧に教えてくれるので有り難いです。

漢字で書いてもらうと何となくニュアンスが伝わります。最初、何から手を付けてよいか分からなくて混乱している時に同級生がこの中国美術学院の写意画教育の順序をノートに書いて教えてくれました。

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白描写生から工筆画の模写を経て小写意、没骨、大写意に至る流れがあって、それぞれの段階で参考とする対象がはっきりしています。特に大写意では呉昌碩の運筆をかなり重視しています。技法伝承の脈絡をはっきりさせてそれが自分の直接の指導教官につながっているのだ、という意識が程度の差はあれ学生の間にもあります。

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そんな素振り中(?)の私の隣で同級生は大学院の最終学年なので、大作をばんばん描いています。
基本的に生の宣紙に描くので描写はほぼ一発決めです。100号くらいの作品を1週間か場合によっては2、3日くらいでどんどん描きます。これを見ているだけでも私にとってはとても勉強になります。

アトリエ5時々先生が筆を取って描くのをみんなで見たり、

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少林寺のお坊さんが来てお話しして下さるのを聞いたりすることも。

中国語の授業もあるので毎日くたくたに疲れますが、得るものも多いです。今はまだ取捨選択するというよりもひたすら吸収しています。情報量が多すぎてちょっと消化不良気味ですが、少しずつ身になっていけば良いなと思います。


2013年