こんにちは。
気がつけば前回の更新からだいぶ間があいてしまいました。
この期間、特に3月末から4月頭にかけては杭州では色々な花が咲き乱れて本当に気持ちの良い季節でした!

DSC06878少し郊外の植物園の梅園を見に行ったり、

DSC07328西湖沿いには桃や桜が

DSC07283大学の校内にも木蓮や海棠が咲き乱れてスケッチの題材には事欠きません。花鳥画専攻の同級生たちは写真を撮ったりスケッチをしたりと忙しそうでした。

私も杭州に来て半年以上が過ぎ、さすがにこちらの友達も増えてきました。あちこち顔を出しているうちに、最近は専攻している花鳥画だけではなく他の専攻にも触れる機会が出てきました。

そもそも中国画の学科は花鳥、人物、山水というふうに画題によって分かれています。学部時代は模写、スケッチ、創作から書道や篆刻に至るまでみっちり一通り勉強します。だから大学院生にもなると絵が描けるだけではなく、書も書けて、印も彫れてあたりまえといった感じで、、、書の素養がない私は妙に肩身の狭い思いをしたりしています。

とくに日本人の私から見て難解に見えるのが山水画です。三遠法とか臥遊とか山水画独特の光の捉え方や空間の概念を本で読んでも、実際どういう構造で絵が出来ているのか、良くわからないものです。

DSC05396去年、蘇州博物館に明の四大家のひとり、文徴明の展覧会を見に行きました。実物を見ても、山水画は形式に目が取られて絵の後ろに隠れている文脈が、とても読み取りにくいと感じるのです。と同時にすべての中国画の分野に(そして日本画にも)通じる基本原理のようなものが隠れているとも感じるのです。

そんな感じで山水に対する興味をふつふつと募らせていたところ、山水を専攻する中国人の友人が「教授が樹法(樹の描き方)の示範をするから見にきたら」と誘ってくれて、山水の授業にちょっとお邪魔してきました。

DSC06849筆を取るのは林海鐘先生という山水画の教授です。山水の学生や他の先生も見守る中、長さ2mくらいの紙に、一気に色々な種類の樹を描いていきます。とにかくビックリしたのは筆を動かすスピードがものすごく早いことです!!何となく山水画は地道にコツコツ描くものだろうと思っていた私はまったく目からウロコでした。

太い線や細い線、かすれた線など表情豊かな線がものすごい早さで画面の上に描かれていって、気がついたら木の形になっていたというような感じ。そして一度筆に墨をつけたら、次に墨をつけるまでの息がものすごく長い。下図のようなものや見本も無いので、それぞれの樹の形やそれを描き出すリズムが完全に先生の身体の中に入っているとしか思えない、あまりの速さにまばたきも忘れるくらい凝視してしまいました。

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細部を見ると、線や点のバリエーションがとても豊かなのが分かります。こんな風に自由闊達に筆を使って描けるのはとにかく経験値と集中力のなせる技なのだと思います。また、圧倒的に描けることを、先生が目の前で見せてくれるというのは中国画の伝承の大事なプロセスであるとも感じるのです。

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20分1枚くらいのペースで午前中だけで2mの紙に4枚、見ている私たちもヘトヘトになるような濃密な時間でした。しかし先生は「5年前だったらこれだけ描くともう疲れちゃってたけど、今は全く疲れなくなった。もっと経験を積んで描けば描くほど気が補われて元気になるというのが理想」と仰っていました。「描けば描くほど元気になる」ってどういう感じなんでしょうか、、ともかくとても良いものを見せて頂いて、先生と誘ってくれた友達に感謝です。

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それ以外にも、授業の無い午後の時間に書道専攻の友達に篆刻を教えてもらいに行ったり、横のつながりで色々な事が学べるのは大学に所属するメリットだなぁ〜とつくづく思います。

こんな感じで慌ただしくも楽しい日々を過ごしています。気がつけば留学期間も残りあと4ヶ月くらい、本当に時間があっという間に過ぎていきます。色々手を広げたは良いけど果たして回収できるのかな?と途方に暮れることもありますが、ともかく今のこの恵まれた環境でできる限り色々なものを見たい、と思い直す今日この頃です。

あけましておめでとうございます!

今年は中国で年を越しました…と言っても、こちらは旧暦の正月(春節、今年は1月31日)がメインのお正月なので、大学も元旦の1日だけお休みで、しかも前期の期末テスト期間のまっただ中だったりします。日本の年末年始にあたる一週間は成績検査のための作品を準備したり、私の場合は中国語の語学のテストがあったりと忙しかったです。なのであまり年を越した実感がありません。

そして昨日から長い冬休みに入りました。

あっという間に一年の半分の授業が終わってしまいましたが、、、最後の1ヶ月は何をしていたかというと、学部生の模写の授業に混ぜてもらって模写をしていました。

模写は大学院時代にさんざんやった私ですが、、ここ中国美術学院の模写は考え方や方法が全く違います。
まず驚いたのがこの模写室の環境の良さ!!

模写1ここは模写の授業専門の教室で、ここに中国美術学院が所蔵する作品を並べて模写をします。
大学の所蔵作品はやはり浙派のものが中心ですが、

模写5

斎白石の海老とか

模写

呉昌碩の牡丹や任伯年の没骨のものまで。 作品もケースで保護、管理しつつ学生が作品の目の前で筆を使えるという、かなり恵まれた環境です。

模写6私は三週間の間に蒲華の竹、幡天寿の蘭、呉昌碩の牡丹、金農の梅などを模写しました。
日本では模写といったら素材研究から初めて、寸法や図像もとにかく原本に忠実に写すので一枚の模写に1年以上かけることも珍しくないですが、こちらの模写は筆の動きや、実際に作者が描いている順序、スピードなどを重視するので写真のように一日に何枚も描いたりします。私にとってはこのスピード感はかなり新鮮なものでした。

敦煌

模写と言えば、今月から3月にかけて大学の近くの浙江省博物館で敦煌壁画の展覧会をやっていて、敦煌の石窟内の壁画と仏像を360度模写と模刻で再現していました。ここで見られた模写は顔料などもかなり原本に忠実なようで、日本の模写の方法に近いです。私としては岩絵具の質感を懐かしく感じたりしました。

そして前期の最後の一週間は、成績検査のための作品展示というのがありました。
検査の時には完成した作品を出さないといけないので、まず、作品を表具屋さんに持って行って裏打ちしてもらいます。

検査1ちょっと怪しい雰囲気、、、ですが小さい作品だったら一枚10元(170円くらい)ですぐにやってくれます。この時期は学生が殺到するのでお店の人もてんてこまいの様子。

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試験期間に入ると、学生が一斉に今学期の作品を教室に並べます。先生は教室を回って成績をつけるようです。皆がそれぞれ力作を並べた教室はなかなか壮観です!

検査2ちなみにこの時期は全ての科がこのような状態なので大学がちょっとした美術館のようでした。他の科の教室に行って展示を見るのも楽しいです。検査5

これは書道の学部三年生のクラス。

検査6篆刻の宿題もありました。

検査4

これは私のスペースです。この9月に杭州に来たときの、右も左も分からない状態を思うと今は少しだけ、とっかかりをつかめたような気持ちです。毎日教室に行く度に色々な出来事があって、本当に刺激的な4ヶ月でした。最初の中国語もままならなかった時から、先生や同級生が道具のことやどんな本を見たら良いかなど、絶えず色々なアドバイスをくれて、本当に感謝しています。
あまりにも色々と一気に吸収したので、これから2ヶ月近い冬休みの間に少し頭を整理して後半もまた頑張りたいと思います。

こんな感じで、年が明けました。
2014年もどうぞよろしくお願いいたします。

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杭州もいよいよ本格的に冬に突入しました。西湖もいつの間にか冬景色でとてもきれいです。
杭州の冬は、思ってたよりもずっと寒いです!!湿度があるせいか、肌に差し込むような寒さです。

DSC041949月の新学期が始まってから1ヶ月半ほど、ひたすら墨だけで「梅蘭竹菊」の運筆を学んでいた私ですが、黄山の写生旅行から帰ってきてからは彩色に昇格(?)して、ここ1ヶ月は陸抑非という画家の画法を集中的に学んでいました。陸抑非は画家でもあり教育者でもあった人ですが、中国美術学院では呉昌碩と同様に陸抑非の写生をとても重視していて、学部生も皆一度は陸抑非の模写を経験してから他の古典を勉強するようです。

呉昌碩などの達筆さに比べると、植物をそのまま写生したような感じで私としては親しみやすく、描いていて楽しいです。しかし筆の動かし方はやはりそれぞれの対象に合わせた特徴があります。私は椿から始めて藤、芙蓉、牡丹…と進んで行きましたが、筆の動かし方が違うと妙に重たい感じになったり、あるいは浅くなったり、形がつぶれてしまったり、、、見た目より難しいです。。。それぞれの植物の特徴がどう運筆と結びつくのかというところが、難しくもあり、ワクワクするところでもあります。

DSC04442これは藤。つるの部分は先生が描いてくれました。達筆〜!
少し様になってきたということで、最近は徐々に課題のサイズも大きくなって、自分で構成して描くようになってきました。

先生といえば、こちらの大学では「示範」といって先生が実際に教室で描いて見せてくれる機会がとても多いです。実際にどういう風に筆を使っているのか、画集や模本を見ても分からないことも何度か先生の示範を見ているうちに運筆のイメージができてきます。中国の画家が、誰に教わったのかという脈絡を重視するのもこの伝承の仕方に要因があるのではないかと思っています。

DSC04874時には花鳥の先生が書を書いてみせてくれることもあります。中国画は自分の作品に画賛を入れないといけないので先生も学生も皆書もひととおり勉強していて、様々な書体が書けたりします。私は書の経験は皆無なので、、、今になって絵と平行して練習しています。

 

IMG_1876まずは基本の楷書から、唐時代の褚遂良の書「陰符経」を模写しています。まだまだ長い道のりです、、、

書を勉強することは自分の作品の題字を書くということ以上に運筆の基礎を学ぶという意味があって、絵を描く上でもとても重要な基礎練習です。書で大事なのは「中鋒用筆」これは筆を立てて、筆の中心を使って描く、というような意味なのですが、この「中鋒」が言葉では何とも説明しづらい、とても感覚的なものです。私も最初は見よう見まねで筆を動かしていて、形を真似てもいまいちこの感覚がつかめなかったのですが、書を平行して勉強しているうちに、最近は何か筆の先に力がこもるような感覚を感じるようになってきました。特に写意画は書との結びつきがとても強いというか、書の延長線上に絵があるような、境目が限りなくあいまいなものだと感じます。

DSC04236これは杭州に来て初めて題字を入れた作品です〜!書は同級生の代筆ですが、落款も入れた初めての完成作品です。この日は先生のお友達の結婚式に皆で小品を描いてお祝いに行くという日で、私のこの作品も同級生の作品と共にお嫁に行きました。

このように(?)毎日思いもよらないことが色々あって、ひとつ学ぶとさらに知りたいことが増えていくような感じで、一年という留学期間はやはり短すぎるなあと思う時もあります。アトリエで先生や同級生が描く様子を見つつ、できるだけ多くのことを吸収できるように、今よりも次はもっと良い線が引けるように、と思います。何がどう自分の作品につながるのか、つながらないのかも分かりませんが、おもしろいと思うことを積み重ねて、日々過ごして行きたいと思います。


制作