昨日から東京藝術大学の田中記念館にて「美しさの新機軸〜日本画 過去から未来へ〜」の展示が始まりました。私は、昨年制作した国宝「阿弥陀聖衆来迎図」の復元模写を展示しています。

この模写は、今年3月に修了した博士課程の研究成果として制作したものです。今は芸大美術館に収蔵されているので、このような展示がないと自分でもなかなか見ることができません。この展示の搬入作業で久々に作品に再会しました。

幅4m以上あるこの模写、あらためて見るとやっぱり大きい。

去年の今頃は制作の大詰めで、寝ている時と食べている時以外はほとんどこの模写に向かう毎日でした。

色を塗ったり

 

きりかねを施したり。一日の大半がこの体勢。
とにかく作業の量が膨大で、気の遠くなるような完成までの道のりでした。

特に大変だったのが裏打ち。

この作品は絹に描かれているので、パネルに張り込んで展示できる状態にするには作品の裏側に紙を何層も貼って補強する、裏打ちという作業が必要です。
ただでさえ絹の裏打ちは難しいのですが、しかもこの巨大サイズということで4人掛かりで朝から始めて、1幅目の裏打ちが終わったのは次の日の明け方になってしまいました。
この時、夜を徹して手伝ってくれた3人の後輩と、指導してくださった半田昌規先生には足を向けて寝られません。他にも制作工程の様々な場面で先輩方や後輩の皆さんには本当に助けてもらいました。

 

博士2年の時には原本を所蔵する高野山で作品の調査もさせていただく幸運に恵まれ、このお陰で研究も飛躍的に進みました。2010年末に10日間ほど高野山霊宝館に作品が展示されていたので、高野山の宿坊に滞在して、毎日霊宝館に通って作品のスケッチをしたり、写真では分からない本物の彩色や線描の雰囲気を目に焼き付けました。この季節の高野山は極寒で、雪の中を宿坊と霊宝館の間を行ったり来たりしながら色サンプルを作ったりしました。以来冬になるとあの底冷えのする霊宝館の展示室や、宿坊で参加した朝の勤行などを思い出します。

原本は国宝に指定されている平安時代の名品です。それを間近で見せていただいた経験は本当に貴重でした。

今回の展示で久しぶりにこの模写を眺めていると、この作品にまつわるひとつひとつの出来事が本当に自分を成長させてくれたことを思わずはにいられません。

 

博士課程の研究内容などは以前ファイナンシャルラーニング社のインタビューでも取り上げていただきましたので、興味のある方はこちらもご覧下さい。

日本美術の継承と創造 -古典を甦らせて- (前編) 日本画家 武田裕子 | ファイナンシャルラーニング

日本美術の継承と創造 -古典を甦らせて- (後編) 日本画家 武田裕子 | ファイナンシャルラーニング

 

「阿弥陀聖衆来迎図」模写のこと